三鷹・下連雀
名残喫茶店(全席喫煙可・20歳未満入店不可)喫茶 名残煙は十四分で見えなくなります。においは、抜けません。
0 — 40分。この線の外に、もう一段あります。
三鷹駅南口から南へ七分、角の一階です。1968年からここにあります。2020年4月に法律が変わって、飲食店は原則屋内禁煙になりました。この店はその日より前から営業していて、客席が19㎡しかなかったので、附則の経過措置に当たりました ── 全席喫煙可のまま続けています。新しく開く店は、どんなに小さくても同じ扱いを受けられません。附則に書いてあるのは「当分の間」という五文字で、終わる日は書いてありません。
- 創業1968年(昭和43年)
- 全席喫煙可(届出済・入口に標識)
- 20歳未満は入店できません
- 客席19㎡・テーブル四席とカウンター三席
- 予約は受けていません
- 日曜定休

写真はよその国(パリ)の、よその店です。名残の店先ではありません。赤い日除けとその上に、CAFE・BRASSERIE・PIZZA・BURGER・PATISSERIE・GLACES・WINE BAR と別の業種の看板がいくつも読めますが、どれも向こうの店のもので、うちはコーヒーと軽食だけです ── ピザもハンバーガーもワインも出しません。写っている席はすべて外ですが、うちに外の席はありません(テーブル四席とカウンター三席、全部中です)。白いクロスも給仕も、この店にはありません。そしていちばん大事なところを書いておくと、この写真の中では、このページに書いてあることが一行も効きません。健康増進法が決めているのは屋内だけで、歩道のテラスは法の外です。うちが九段かけて書いているのは、屋根の下の話です。
01The notice
標
この店は全席喫煙可です。それがどういう仕組みでそうなっているのかを、先に書いておきます。
扉に掲示しているもの
喫煙可能店
この場所では喫煙することができます
20歳未満の方は、客・従業員を問わず立ち入ることができません
等幅で組んであるものは、この店が書いた文ではありません。上は法令の 様式に沿った文面です。
「法律で認められているから、この店では吸えます」は、半分しか当たっていません。健康増進法は第29条で飲食店を原則屋内禁煙にしていて、この店が今までどおりにできているのは、附則の経過措置のほうです。そしてその附則に書いてある期間は、「当分の間」という五文字だけです。終わる日は書いてありません。日付が無いことは、続くという意味ではありません。
経過措置に当たるのは、2020年4月1日に既に営業していて、資本金が5,000万円以下で、客席が100㎡以下の店です。この店は1968年からここにあって、客席は19㎡なので当たりました。逆に言うと、翌日に開いた六坪の店は当たりません。これは小さい店に与えられた権利ではなく、古い店に残ったぶんです。あとから取ることはできません。
20歳未満の方をお断りしているのは、当店の方針ではありません。喫煙可能な場所には20歳未満の者を立ち入らせてはならない、と法に書いてあります。客としても、働く人としてもです ── だからこの店は、19歳の方を雇うこともできません。お子さま連れでのご来店も、同じ理由でお断りしています。方針であれば例外を作れますが、これは作れません。
入口の標識は、掲示しなければならないことになっています。貼っているのは親切ではなく義務です。そして義務なのは、喫煙にするかどうかを決めたのがこの店だからです ── 決めたぶんを、入口で先に言え、という順番になっています。
いつまで続けられるかは、この店には分かりません。分かっているのは、終わりかたが四通りあることだけです。
広げる
客席を100㎡より広くした日に、経過措置から外れます。
建て替える
この建物をやめて別の場所で開き直せば、それは新しい店です。
やめて誰かが継ぐ
同じ場所でも、営業の主体が変われば経過措置は付いてきません。
国がやめる
附則の「当分の間」が終われば、その日に終わります。予告がある保証はありません。
面白いのはここです。原則どおりの店が喫煙専用室を作るなら、出入口で室外から室内へ 0.2m/秒 以上の気流があること、壁や天井で区画されていること、煙を屋外へ出していることを満たさなければなりません。ところが店全体を喫煙可能にしたこの店には、その基準が一つもかかりません ── 店の中に、守るべき禁煙の席が無いからです。煙を分ける店ほど証明することが多く、分けない店は何も証明しない。このページの分は、その「かかっていない基準」に自分を当てて測ったもので、うちの奥の卓は 0.2m/秒 に達していません。
「夜だけ喫煙可にしてほしい」と言われることがありますが、できません。法律が認めているのは場所で分けることだけで、時間帯で分ける仕組みは制度として存在しません。やらないのではなく、制度に窓口がありません。
02Minutes
分
火をつけてから、席のあたりで煙が見えなくなるまでを数えています。いちばん速い日で 14分 です。
0分
火をつけた瞬間
煙は天井へ上がって、レジの上の換気扇へ向かいます。席から見て、いちばん濃いのはここです。
5分
一本が終わる
灰皿の上に残るぶんだけになります。吸っている当人より、向かいの席のほうが長く感じます。
14分
席のあたりで見えなくなる
光にかざして見える白さが消えます。換気扇を強にして、窓を閉めたときの数字です。これがこの店のいちばん速い値です。
25分
向かいの席で分からなくなる
隣の卓の方が「煙たい」と感じなくなるのが、だいたいこのあたりです。ここから先は、においの話に変わります。
40分
店の空気が開店前に戻る
最後の一本から四十分で、朝、鍵を開けたときと同じところまで戻ります。閉店後に四十分まわしてから帰るのは、そのためです。
——
カーテン、壁、椅子の布
ここから先に、この店が出せる数字はありません。染みたにおいは換気では抜けず、洗っても下地までは戻りません。五十年ぶん溜まっています。
色が付いているのは、抜けるものだけです。いちばん下の段に色が無いのは、 そういう意味です。
席のあたりで、煙が見えなくなるまで
9分
換気扇に近く、窓も開けられるので、早く抜けます。そのかわり冬はいちばん寒く、夏は西日が入ります。
これは煙が見えなくなるまでの分で、煙たくなくなるまでの分では ありません。煙たいかどうかは、お客さまが決めることです。
そして、においはこの数字の外にあります。
十四分というのは、換気扇を強にして窓を閉めたときの数字です。そのあいだ、暖房は外へ捨てています。だから短い数字は、いい店の印ではありません ── 冬の夕方、この店はわざと弱にしていて、そのときは 30分 かかります。寒い日に十四分で抜ける店は、寒い店です。どちらを取るかを、その日その日で決めています。
この分はすべて、店で数えたものです。国が飲食店に求めている換気の数値は、この店には一つもかかっていません(下の「標」を読んでください)。よその種類の店に向けて書かれた基準を、自分に当てて測っているだけです。検査を受けた数字ではありません。
03What does not clear
抜けないもの
段の下のほうに数字が入っていないのは、測り忘れではありません。染みたにおいには、この店が動かせる値が無いということです。つまりこの軸は、問題が終わるより先に終わります。うちが直せるほうの数字は、いちばん小さい問題のほうです。
満席で、みなさんが吸っている日の数字です。空いていれば短くなり ますが、どれだけ空いていても、下の欄が空になることはありません。
帰ってから、風に当てて分からなくなるまで
5時間ほど
薄い綿・化繊で1時間いらっしゃった場合の目安です。洗えば早く済みます。 洗わずに戻す方法を、この店は持っていません。
どの組み合わせを選んでも、この欄に「残りません」は出ません。 出さないようにしているのではなく、出せる組み合わせを この店が見つけていないからです。
煙が苦手な方に、慣れてくださいとは言いません。この店を選ばないのが正しい日は、たくさんあります。
04Seats
席
七席です。換気口からの距離で、抜けるまでの分が三倍ちがいます。早い順に並べてありますが、良い順ではありません。いちばん早く抜けるカウンターは、いちばん落ち着かない席です。いちばん遅い奥の卓は、いちばん長くいられる席です。どちらを取るかは、その日のご予定のほうで決まります。
カウンター
7分
換気口から 0.6m / 3 席
換気扇の真下です。煙はいちばん早く抜けますが、音もいちばん近く、油の音と換気扇の音がずっとしています。
窓ぎわ(一番・二番)
9分
換気口から 1.2m / 2 席
換気扇に近く、窓も開けられるので、早く抜けます。そのかわり冬はいちばん寒く、夏は西日が入ります。
奥の卓(三番・四番)
22分
換気口から 4.1m / 2 席
換気扇からいちばん遠く、抜けるのに三倍かかります。そのかわり誰の通り道でもなく、長くいるならここです。0.2m/秒 には届いていません。
この分は、一人が一本吸ったときの数字です。二人が同時に吸えば倍にはなりませんが、確実に延びます。何人がいつ火をつけるかは店に決められないので、席の数字は目安より先へは行きません。
05Menu
品書き
コーヒーと軽食だけです。酒は扱っていません。
ブレンド¥520
深煎りです。1972年から同じ配合で、豆は国分寺の焙煎所から週に二度届きます。
アメリカン¥520
薄めたものではなく、浅く炒った豆を別に挽いています。長くいらっしゃる方はこちらのほうが多いです。
ウインナコーヒー¥640
生クリームを浮かせます。混ぜずに、上から飲んでください。
レモンスカッシュ¥600
夏だけです。瓶の炭酸と、切ったレモンだけで作ります。
ナポリタン¥900
鉄板で出します。粉チーズとタバスコは卓に置いてあります。
たまごサンド¥780
耳は落とします。落とした耳は、翌日のまかないです。
プリン¥480
蒸したものです。固いほうです。日に十二個しか作りません。
厚切りトースト¥420
四枚切りです。バターか、あんこか、両方か選べます。
お冷やとおしぼりは出しますが、席まで運ぶだけで、給仕はしていません。呼んでいただければ伺います。
灰皿は卓に置いてあります。吸わない方の卓にも置いてあります ── 下げることはできますが、この店に禁煙の席はありませんので、下げても意味は変わりません。
06What we cannot do
できないこと
できない理由も一緒に書きます。方針であれば例外を作れますが、作れないものが混ざっています。
20歳未満の方の入店
法で、喫煙可能な場所に20歳未満の者を立ち入らせてはならないとされています。お一人でも、保護者とご一緒でも入れません。当店の方針ではないので、例外を作れません。
禁煙の席
この店に禁煙の席はありません。作るには壁と天井で区画して、出入口の気流(0.2m/秒)と屋外排気を満たす必要があり、19㎡では作れません。「奥なら大丈夫」とも言いません ── 奥はいちばん遅い席です。
時間帯で分けること
「夜だけ喫煙可に」はできません。法律が認めているのは場所で分けることだけで、時間帯で分ける仕組みが制度として存在しません。
予約
七席しかないので、受けていません。満席のときは外でお待ちいただくか、出直していただいています。
「煙は気になりません」と言うこと
言えません。この店は全席喫煙可で、実際に煙たい日があります。気になるかどうかを決めるのはお客さまのほうで、店が先に代わりに答えることではありません。
においを取ること
上着に付いたにおいを取る方法を、この店は持っていません。消臭剤も置いていません ── 置くと、取れるという意味になってしまいます。
カード・QR決済
現金だけです。端末を置いていないので、いまのところ対応の予定もありません。
07How to come
通いかた
入る前に決めていただくことが、一つだけあります。
- 01この店は全席喫煙可です。入口に標識が貼ってあるので、押す前に読んでください。
- 0220歳未満の方は入れません。年齢の分かるものをお持ちでない場合、お断りすることがあります。
- 03上着には、においが付きます。大事なご予定の前でしたら、日を変えてください。
- 04混んでいるときは一時間を目安にお願いしていますが、空いていれば何時間でもかまいません。
- 05吸わない方も歓迎です。ただし煙は席まで来ます。窓ぎわが早く抜けます。
いらっしゃるまえに
予約は受けていません。七席なので、混んでいる時間は外でお待ちいただくことになります。空いているのは平日の14時から16時ごろです。入口に標識を貼っていますので、押す前に一度読んでください ── 読んでから引き返していただくのが、いちばん無駄がありません。
電話 0422-40-0045 / hello@nagori.example
08Questions
よくある問い
- 本当に全席で吸えるのですか
- 吸えます。2020年4月1日の法改正のとき既に営業していて、客席が19㎡だったので、附則の経過措置に当たりました。届出をして、入口に標識を貼っています。
- いつ禁煙になりますか
- 分かりません。附則には「当分の間」とだけ書いてあって、終わる日が書かれていないためです。この店の側から終わる道が三つ(広げる・建て替える・継ぐ)、国の側から終わる道が一つあります。
- 子どもを連れて入れませんか
- 入れません。法で、喫煙可能な場所に20歳未満の者を立ち入らせてはならないとされています。店の判断ではないので、お一人でもご一緒でも同じです。
- 吸いませんが、入っていいですか
- もちろんです。ただし煙は席まで来ます。窓ぎわの二席がいちばん早く抜けるので、そちらが空いていればお勧めします。
- 換気はしているのですか
- しています。ただ、国が飲食店に求めている換気の数値は、この店には一つもかかっていません。ページに出している分は、よその種類の店に向けて書かれた基準に自分を当てて、店で数えたものです。検査を受けた数字ではありません。
- 服のにおいはどうすればいいですか
- 取る方法を、この店は持っていません。帰ってから風に当てていただくのがいちばんです。大事なご予定の前の日は、来ないほうがいいと思います。
- 加熱式たばこは違う扱いですか
- 法には紙巻きと違う区分がありますが、この店は全席喫煙可なので、どちらも同じように吸えます。煙が抜けるまでの分は、加熱式のほうが短いです。
09The shop
店
名残は、あとに残るもののことです。この店では二つ指しています。一つは、においです ── 帰ったあと、上着の襟から一日ぶん出てきます。もう一つは、この店が受けている扱いのことです。2020年4月の法改正で、飲食店は原則屋内禁煙になりました。そのとき既に営業していて小さかった店だけが、経過措置として今までどおりにしてよいことになっています。新しく開く店は取れません。つまりこれは、小さい店に与えられた権利ではなく、古い店に残ったぶんです。残ったぶんには、終わる日が書いてありません。
- 月 – 土
- 9:00 – 19:00
- ラストオーダー18:30
- 日
- 定休
- 換気(強)
- 終日
- 冬の夕方だけ弱にします
- 閉店後の換気
- 40分
- まわしてから帰ります
東京都三鷹市下連雀0-0-0
JR中央線 三鷹駅 南口から徒歩7分(連雀通りに出る手前、角の一階です。駐車場はありません)
テーブル四席とカウンター三席、あわせて七席です。客席は19㎡です。相席はお願いしていません。
現金のみです。カードもQR決済も使えません。
飲食店営業の許可(東京都多摩府中保健所)です。かつての喫茶店営業許可は2021年の食品衛生法改正で飲食店営業許可に一本化されたので、いまはこの一本だけを持っています。酒は扱っていません。
- 全席喫煙可です。入口に標識を掲示しています(喫煙可能室設置施設の届出済)。
- 20歳未満の方は、客・従業員を問わず入店できません。法によるもので、当店の判断ではありません。
- かつての喫茶店営業許可は2021年の食品衛生法改正で飲食店営業許可に一本化されたので、いまはその一本だけを持っています。
- 席は七つです。相席はお願いしていません。
- 現金のみです。
- 写真撮影は、ほかのお客さまが写らない範囲でお願いします。
- 閉店後、換気扇を四十分まわしてから鍵を閉めています。
戸波 明となみ あきら
二代目
1968年に父が開けた店を、1996年から継いでいます。淹れるのも焼くのも会計も一人です。
法律が変わった年、やめるか続けるかを半年考えました。続けると決めたのは、父の代からの方が七人いて、その方々の行き先が思いつかなかったからです。ただ、残されたぶんで営業しているという自覚はあります。だから入口に貼ってある紙のことは、お客さまにも先に読んでいただくようにしています。
顔写真はありません。立っているのは、換気口へ向かう一筋だけです。
客席は 19㎡ です。2020年4月1日時点で営業していて、100㎡ 以下だったので経過措置に当たりました。 ここを広げた日に、当たらなくなります。